事務所便り
特定技能・育成就労の分野別運用方針が閣議決定されました (2026-03)
政府は、令和9年4月からの特定技能および育成就労制度に関し、「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針及び特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」(以下、「分野別運用方針」という)を1月23日に閣議決定しました。分野別運用方針のポイントは以下の通りです。
◆対象分野と受入れ見込数
対象分野は、特定産業19分野、育成就労産業17分野で構成され、リネンサプライ、物流倉庫、資源循環が新たに追加されます(自動車運送業・航空は特定産業のみ)。これらは人手不足が特に深刻として、分野ごとに受入れ見込数(上限として運用)が示されました。全体の受入れ見込数は、特定技能80万5,700人、育成就労42万6,200人の合計123万1,900人(令和11年3月末まで)です。
◆日本語能力の水準
日本語能力の水準は、育成就労開始時は日本語A1相当(または同等の講習受講)、1年経過時はA1相当以上、本人意向による転籍時はA2.1相当以上、育成就労終了(特定技能1号相当)時はA2.2相当以上、特定技能2号ではB1相当以上が目安です。
分野によって上乗せもあり、例えば自動車運送業(バス・タクシー)では、原則日本語B1を求めますが、日本語サポーターの同乗など一定の条件を満たすとA2.2まで引下げ可能です。
◆転籍、上乗せ基準
育成就労制度では本人意向による転籍が認められており、当面は分野ごとに1~2年の転籍制限期間があります。ほかに、制度の適正性を確保するため、特定の分野で上乗せ基準(事業者の範囲の限定(許認可等)などの追加要件)を設けています。なお、運用要領は追って公開される予定です。
【参考】
育成就労制度に係る制度の運用に関する基本方針・分野別運用方針・運用要領(出入国在留管理庁)
https://www.moj.go.jp/isa/03_00169.html
「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」が改正されました (2026-03)
内閣官房と公正取引委員会は「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を令和8年1月1日付けで改正しました。
◆改正のポイント
令和8年1月からの「中小受託取引適正化法」(以下、「取適法」という)等の施行に伴い、受注者から協議の要請があった場合に、これに応じず一方的に取引価格を据え置くことは「協議に応じない一方的な代金決定」に該当する旨の明記等がなされました。
◆本指針の性格
本指針は、労務費の転嫁に関する事業者の発注者・受注者の双方の立場からの行動指針であり、12の行動指針に沿わない行為により、公正な競争を阻害するおそれがある場合には、公正取引委員会により独占禁止法および取適法に基づき厳正に対処されます。一方、記載された発注者としての行動をすべて適切に行っている場合は独占禁止法および取適法上の問題は生じない旨、明記されています。
◆改正後の12の行動指針(採るべき行動/求められる行動)
(発注者)
- 本社(経営トップ)の関与
- 発注者側からの定期的な協議の実施
- 説明・資料を求める場合は公表資料とすること
- サプライチェーン全体での適切な価格転嫁を行うこと
- 要請があれば協議のテーブルにつくこと
- 必要に応じ考え方を提案すること
(受注者)
- 相談窓口の活用
- 根拠とする資料
- 値上げ要請のタイミング
- 発注者から価格を提示されるのを待たずに自ら希望する額を提示
(双方)
- 定期的なコミュニケーション
- 交渉記録の作成、発注者と受注者の双方での保管
【参考】
(令和7年12月26日)「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の改正について | 公正取引委員会
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2025/dec/202512_roumuhi.html
障害者雇用納付金 対象拡大の動きと企業の対応 (2026-03)
障害者の法定雇用率を下回った企業に課される納付金(不足する人数に応じて1人当たり月5万円)の対象について、現在は免除されている常用労働者数100人以下の中小企業にも拡大すべき、との意見が盛り込まれた報告書が、2月6日に公表されました。早ければ令和9年の通常国会での障害者雇用促進法等の改正を目指すと報道されています。
◆企業の対応
上記報告書には、100人以下の企業への納付金対象拡大に肯定的な意見があった一方で、「障害者雇用相談援助事業等を通じた十分な支援等により、中小企業における障害者雇用の進展を確認した後に、改めて検討するべき」との意見があったことも示されました。
障害者雇用相談援助事業では、労働局の認定事業者から、障害者の一連の雇用管理に関する相談援助を無料で受けることができます(原則1年を限度)。
雇用継続に関しては、地域障害者職業センターの「職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援」といった公的支援もあります。
新たに障害者雇用に取り組む企業では、こうした支援を活用しながら具体的な雇用を検討するとよいでしょう。
◆助成金の活用も
障害者雇用では、助成金も大きく分けて(1)障害者の雇入れ等を支援するもの、(2)障害者が働き続けられるよう支援するもの、(3)障害者雇用の相談援助を行う事業者に対するもの、があります。例えば(1)では、試用期間中に職場への適応状況を確認してから本格雇用へ移行することができるトライアル雇用助成金があります。
なお、助成金の支給要件や助成額等は頻繁に変更されるため、活用にあたっては最新情報の確認が必要です。
【参考】
今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70028.html
事業主の方へ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page10.html
「育児休業等給付専用のコールセンター」が設置されています (2026-01)
◆複雑化する実務
今年施行された改正育児・介護休業法の施行に伴い、従来の育児休業給付金に加え、出生後休業支援給付金や育児時短就業給付金が新設され、申請書類や要件等がそれぞれ異なり、実務が複雑化してきています。そして、申請から給付まで、時間がかかることも問題になっています。
◆コールセンターの設置
厚生労働省は、それらの問題を踏まえ11月17日に「育児休業等給付専用のコールセンター」を設置しました。育児休業等給付に関する制度内容や申請手続、電子申請の処理状況の目安に関して、問い合わせに応じてもらえます。
◆問い合わせの対象となる給付金
- 育児休業給付金(支給期間の延長を含む)
- 出生時育児休業給付金
- 出生後休業支援給付金
- 育児時短就業給付金
◆問い合わせの対象となる内容
- 給付金の内容や支給要件を知りたい
- 支給額がどのように計算されるか知りたい
- 給付金の申請手続を知りたい
- 支給時期や電子申請の処理の目安を聞きたい
※具体的な支給日の回答は行われない
実務担当者にとっては、制度理解と、申請手続の管理、そして社内体制整備が必須実務となるでしょう。不明な点は、このコールセンターを活用してクリアしていきましょう。
【厚生労働省「育児休業等給付専用のコールセンターを設置します」】
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001593629.pdf
失業保険の申請サポートをめぐるトラブルに注意 ~ 国民生活センター・東京労働局が注意喚起 (2026-01)
国民生活センターは、「失業保険の受給額や受給期間が増える」とうたう申請サポートに関する相談が増えているとして、注意を呼びかけました。東京労働局も同様に、「失業保険の金額・期間を増やせる」と宣伝する業者に関するトラブルへの注意喚起を発信しています。失業保険は、ハローワーク(公共職業安定所)での申請と審査に基づき支給される公的支援制度であり、外部事業者が給付内容を増やせるものではありません。
◆過度な宣伝と解約をめぐるトラブルが多発
全国の消費生活センターには、「サポートを依頼すれば受給額が増えると思ったが実際には増えなかった」「途中で解約を申し出たところ高額な違約金を請求された」といった相談が寄せられています。申請サポート契約の中には、広告や勧誘の段階で過度な期待を持たせる表現が使われているケースもあり、契約内容の理解不足によるトラブルが増えています。契約前に、サービス内容と費用、解約条件が妥当かどうかを慎重に確認することが重要です。
◆不正受給を促す悪質な事例も
さらに深刻なのは、不正受給を促すかのような誘導が見られる点です。実際にはメンタル不調がないにもかかわらず「うつ病と診断されるためのマニュアル」が送られてくるなど、虚偽の申請を促すケースが報告されています。不正受給が行われた場合、受給者本人が返還・納付を命じられるほか、詐欺罪などの刑事罰の対象となる可能性があります。事実と異なる申告を求められた場合は、絶対に応じてはいけません。
失業保険は再就職を支援する大切な制度です。事業者との契約に不安を感じた場合やトラブルが生じた場合は、すぐに最寄りの消費生活センター等へ相談しましょう。
【国民生活センター「失業保険の給付額等を増やすことができるとうたう申請サポートに注意 ─不正受給を促すかのようなケースも!─」】
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20251203_1.pdf
【東京労働局「「失業保険の金額・期間を増やせる」とうたう申請サポートにご注意ください。」】
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/newpage_01662.html
“もにす”認定制度をご存じですか? (2026-01)
“もにす”認定制度とは、障害者の雇用の促進および雇用の安定に関する取組みの実施状況などが優良な中小事業主を厚生労働大臣が認定する制度です。認定事業主になると、以下のメリットがあります。なお、認定に有効期限はありません。
◆障害者雇用優良中小事業主認定マークが使用できる
事業主の広告や労働者の募集の用に供する広告や商品等に認定マーク(愛称:もにす(企業と障害者が、明るい未来や社会の実現に向けて「ともにすむ」という思いが込められている))を付すことができます。
◆周知広報の対象となる
認定事業主の情報は、厚生労働省および都道府県労働局のホームページに掲載されます。また、ハローワークの求人票に認定マークが表示されます。
そのほかにも、公共調達等における加点評価を受けられたり、日本政策金融公庫の低利融資対象となったりする場合があります。
◆認定事業主になれるのは?
常時雇用する労働者が300人以下の中小事業主であって、
- 障害者雇用への取組み、取組みの成果、それらの情報開示の3項目について、項目ごとの合格最低点に達しつつ、合計で50点中20点以上を獲得すること
- 法定雇用率を達成していること
- 過去に認定を取り消された場合、取消しの日から起算して3年以上経過していること
- 雇用関係助成金の不支給措置を受けていないこと 等
の基準を満たした場合に認定事業主になれます。なお、認定の申請は、事業主の主たる事業所を管轄する都道府県労働局で行います。
◆制度見直しの動き
厚生労働省は、“もにす”認定の基準を、より質を的確に評価する内容に見直し、新たに大企業も対象に加える等の案を、「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」に示しました。今後の制度見直しの動きにも注目です。
【厚生労働省「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/monisu.html