事務所便り
障害者の雇用状況と法定雇用率引上げ~厚生労働省「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」等より (2025-02)
厚生労働省は令和6年12月20日、令和6年の「障害者雇用状況」集計結果を公表しました。障害者雇用促進法では、事業主に対し、常時雇用す
る従業員の一定割合(法定雇用率。民間企業においては2.5%)以上の障害者を雇うことを義務付けています。
◆民間企業における雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新
民間企業(常用労働者数が40.0人以上の企業:法定雇用率2.5%)に雇用されている障害者の数は67万7,461.5人(3万
5,283.5人増、対前年比5.5%増)、実雇用率2.41%(対前年比0.08ポイント上昇)で、雇用障害者数、実雇用率いずれも過去最
高を更新しています。一方で、法定雇用率達成企業の割合は46.0%(対前年比4.1ポイント低下)となっています。
◆雇用者の内訳では、精神障害者の雇用増加の伸び率が大きい
雇用者のうち、身体障害者は36万8,949.0人(対前年比2.4%増)、知的障害者は15万7,795.5人(同4.0%増)、精神障
害者は15万717.0人(同15.7%増)と、いずれも前年より増加しています。特に精神障害者の伸び率が大きくなっています。
◆法定雇用率未達成企業の状況
法定雇用率の未達成企業は6万3,364社で、そのうち、不足数が0.5人または1人である企業(1人不足企業)が、64.1%と過半数を
占めています。また、障害者を1人も雇用していない企業(0人雇用企業)は3万6,485社であり、未達成企業に占める割合は、57.6%と
なっています。
法定雇用率は、令和8年度に2.7%へと段階的に引き上げられます。企業は継続して障害者雇用の推進に取り組む必要があります。
【厚生労働省「令和6年 障害者雇用状況の集計結果」】
https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001357856.pdf
SNS等に労働者の募集に関する情報を載せる際の注意点 (2025-02)
◆労働者の募集広告には、募集主の氏名等の表示が必要
職業安定法では、インターネットやX等のSNSを含む広告等により、労働者の募集に関する情報等を提供するときは、虚偽の表示または誤解を 生じさせる表示をしてはならないこととされています(第5条の4)。
昨今、インターネットで犯罪実行者の募集が行われる事案(闇バイト)が見られ、その中には、通常の労働者募集と誤解を生じさせるような広告 等も見受けられることから、厚生労働省は、SNS等を通じて直接労働者を募集する際には、①募集主の氏名(または名称)、②住所、③連絡先 (電話番号等)、④業務内容、⑤就業場所、⑥賃金の6情報は必ず表示するよう、事業者に呼びかけています。
- 「住所(所在地)」はどこまで記載すればよいか?
ビル名、階数、部屋番号まで記載する必要があります。
- 「連絡先」として何を記載すればよいか?
電話番号、メールアドレスまたは、自社ウェブサイト上に備え付けられた専用の問合せフォームへのリンクのいずれかを記載する必要がありま す。
- 氏名等の情報自体を記載せず、氏名等の情報が記載されている会社ウェブサイトの募集要項等のリンクを記載することでも問題ないか?
会社ウェブサイトの募集要項等のリンクのみでは、そもそも求人であるかどうかも含め、誤解を招く可能性があるため、募集情報を提供する広 告等自体に上記6情報を記載する必要があります。
- 業務内容、就業場所および賃金については、職業安定法第5条の3や労働基準法第15条で求められるのと同じように詳細を記載する必要
があるか?
必ずしも同じである必要はないが、求職者が誤解を生じないよう、業務内容や就業場所、賃金について記載する必要があるとしています。
例えば、就業場所について、「就業場所の変更の範囲」は記載せず「雇入れ直後の就業場所」のみを示す形や、複数の候補を示し、「応相談」 とする形、賃金について、「時給1,500円~」とする形でも、記載があれば、直ちに職業安定法第5条の4違反とはならないと考えられる としています。
【厚生労働省「労働者の募集広告には、「募集主の氏名(又は名称)・住所・連絡先(電話番号等)・業務内容・就業場所・賃金」の表示が必要
です」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/r0604anteisokukaisei1_00006.html
高年齢者の雇用状況~厚生労働省「令和6年 高年齢者雇用状況等報告」より (2025-02)
◆65歳までの高年齢者雇用確保措置の実施状況
厚生労働省は、従業員21人以上の企業237,052社からの報告に基づき、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律で義務付けられている 「高年齢者の雇用等に関する措置」について、令和6年6月1日時点での企業における実施状況等を取りまとめ、公表しています。
それによれば、65歳までの高年齢者雇用確保措置について「継続雇用制度の導入」により実施している企業が67.4%[前年比1.8ポイン
ト減少]、「定年の引上げ」により実施している企業は28.7%[同1.8ポイント増加]となっています。
◆70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況と定年制の状況
また、70歳までの高年齢者就業確保措置を実施済みの企業は31.9%[同2.2ポイント増加]となっており(中小企業では32.4%[同 2.1ポイント増加]、大企業では25.5%[同2.7ポイント増加])、65歳以上定年企業(定年制の廃止企業を含む)は32.6%[同 1.8ポイント増加]となっています。
就業確保措置を実施済みの企業について措置内容別に見ると、定年制の廃止は3.9%[変動なし]、定年の引上げは2.4%[同0.1ポイン
ト増加]、継続雇用制度の導入は25.6%[同2.1ポイント増加]、創業支援等措置の導入は0.1%[変動なし]となっています。
◆人手不足への対応
現在、多数の企業が人手不足を実感している中、人材確保は企業経営にとって死活問題となっています。高齢者の雇用、活用は、このような人材 確保の面からも今後さらに重要テーマとなっていくことでしょう。
【厚生労働省「令和6年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します」】
https://www.mhlw.go.jp/content/11703000/001357147.pdf
ハローワークにおける求人不受理の対象が追加されます (2025-01)
◆ハローワークにおける求人不受理の対象とは?
ハローワークの求人は、労働関係法令の規定に違反し、企業名公表等の措置が講じられた者からの求人の申込みについては受理しないことができ ると、職業安定法の政令に規定されています。
例えば、労働基準法や最低賃金法の規定に、過去1年間に2回以上、同一条項違反で是正指導を受けた場合は是正後6カ月経過まで不受理となり
ます。送検・公表された場合は、送検後概ね1年経過まで不受理となります。また、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法の規定に違反し、是正
を求める勧告等に従わずに公表された場合も是正後6カ月経過まで不受理となります。
◆改正育児・介護休業法の施行にあわせて求人不受理の対象が追加
2024年の通常国会で成立した改正育児・介護休業法は、一部が2025年4月1日と2025年10月1日の2回に分けて施行されます。こ の改正法の施行にあわせて、求人不受理の対象が追加されます。
具体的には、労働者が家族の介護の必要性に直面した旨を事業主に対して申し出たことを理由とした不利益取扱いの禁止への違反が、2025年 4月1日から追加されます。
また、(1)労働者から確認された就業に関する条件に係る意向の内容を理由とした不利益取扱いの禁止、(2)柔軟な働き方を実現するための 措置(3歳から小学校就学までの子を養育する労働者に対する始業時刻等の変更等の措置)の実施義務、(3)事業主が講じた柔軟な働き方を実現 するための措置に係る申出をしたこと等を理由とした不利益取扱いの禁止を定めた規定への違反について、2025年10月1日から追加されま す。
【厚生労働省「第376回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 資料」】
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45125.html
外国人技能実習生の転籍要件が明確化されました (2025-01)
◆技能実習の運用要領を改正
出入国在留管理庁が、外国人技能実習の運用要領を改正し、転籍を可能とする場合の要件に、「ハラスメントを受けている場合」が明記されまし た。技能実習生の失踪の増加や、外国人労働者に対する人権侵害に対する批判が国際的にも高まっていることを受けた対応だと思われます。
技能実習生は原則3年間転籍ができませんが、「やむを得ない事情」があったときは、受入企業を変更する転籍が認めています。
これまで、この「やむを得ない事情」にどのような場合が該当するのか定義があいまいでしたが、暴行や各種ハラスメント(暴言、脅迫・強要、 セクハラ、マタハラ、パワハラなど)を受けている場合、重大悪質な法令違反・契約違反があった場合に転籍できることが明確化されるとともに、 直接被害を受けた技能実習生だけでなく、同僚の技能実習生についても対象となりました。
技能実習であるからといって、ハラスメントや賃金不払いなどの法違反が許されないことが明確にされた形です。また、転籍を申し出るための専
用様式も作成されたそうですので、今後は転籍の申出がなされやすい状況となったようです。
◆技能実習制度は「育成就労制度」へ
労働基準法違反・法定労働時間を超えた労働、労働安全法違反、労災隠し、賃金未払い、実習計画に基づかない実習などは、認定の取り消しや是 正指導、送検等につながります。
技能実習制度はあらたに「育成就労制度」への見直しが行われます。新たな制度は2027年の開始が見込まれますので、今後の動向に注意して おきましょう。
【「技能実習制度における「やむを得ない事情」がある場合の転籍の改善について」】
https://www.moj.go.jp/isa/content/001426916.pdf
1月20日から、希望する離職者のマイナポータルに離職票を直接送付するサービスが始まります (2025-03)
◆離職票が使われる場面
離職票とは、雇用保険の被保険者が離職後に求職者給付(基本手当等)を受給するために必要な書類です。離職票は現在、ハローワークから事業
所を通して離職者に送られていますが、2025年1月20日から、希望する離職者のマイナポータルに直接送付するサービスが始まります。離職
者がハローワークで求職の申込みをするには、事業所から離職票が届くまで1週間から10日ほど待つ必要がありましたが、新サービスを使えばそ
の期間が短縮されます。事業所は離職者に離職票を送る手間が省けます。
◆離職票が送付されるまでの流れ
現在、事業所が資格喪失届と離職証明書をハローワークに提出すると、離職証明書は3枚複写になっており、ハローワークはそのうち事業主控と
離職票を事業所に郵送または電子送付します。事業所はその離職票を離職者に郵送します。2025年1月20日から一定の条件を満たした場合
は、事業所が資格喪失届と離職証明書をハローワークに電子申請すると、ハローワークは離職証明書の事業主控を事業所に電子送付し、離職票を離
職者のマイナポータルに直接送付します。
◆離職票のマイナポータル直接送付のために事業所がやるべきこと
- 被保険者の方に被保険者向けリーフレットを使って周知しましょう。このサービスが被保険者の任意であることに留意する必要がありま す。
- 被保険者本人のマイナポータルで、マイナンバーがハローワークに登録されているか確認してもらいます。登録されていない場合は、事業 所が「個人番号登録・変更届」をハローワークに提出し、マイナンバーを登録してください。
- 被保険者のマイナンバー登録が済んでいる場合は、被保険者本人にマイナポータル上で「雇用保険WEBサービス」との連携設定を行って もらいます。2.及び3.は資格喪失届提出の2週間前までに行ってください。
- 雇用保険の離職手続を電子申請で行ってください。電子申請ではなく紙様式でハローワークに届け出た場合は、離職票は従来どおり事業所 経由となります。
【厚生労働省「〔事業主の皆さまへ〕2025年1月から、希望する離職者のマイナポータルに「離職票」を直接送付するサービスを開始しま す!」】
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001353550.pdf